浅漬けの基本と粗塩を使う理由



浅漬けは家庭料理の基盤となる調理法の一つだと思います。安くて新鮮な野菜を買ってきて漬けるだけで一品が出来てしまう。家計にも身体にも優しいのでこれを作らない手はありません。それでは浅漬けに適した塩についての話から始めたいと思います。

塩は必ずにがりを含んだものを選んで下さい。スーパーで購入出来る商品の例を挙げると「赤穂の天塩」「伯方の塩」「瀬戸のほんじお」等がにがりを含んでおります。

粗塩を使った漬物は食感が良い

漬物の塩は、純度(塩化ナトリウムの含有率)が低い粗塩がよいとされる理由の一つに、他のにがり成分、マグネシウムやカルシウムが野菜に含まれているペクチンと結合し、マグネシウム塩やカルシウム塩をつくり、そのためかたくなり歯切れがよくなることもあげられています。

株式会社 天塩 塩にまつわる知識

焼き塩のような粗塩の水分を飛ばした商品もあります。それでもなんら問題はないのですが、塩の水分量が多い粗塩の方が野菜とのなじみが良いです。なじみが良いと浸透圧がスムーズに促進され、野菜がすみやかに水分を排出することによって野菜がその水溶液に漬かり(水上がりが早い)、均一に塩味がまわります。漬物石などの重しをすると、さらにその一連の反応が早くなります。

浅漬けに関しては食中毒事件が起きたことも記憶に新しく、O157を恐れてそれを敬遠している方もいらっしゃるかもしれません。無理に食べて頂きたいとは思いませんが、食中毒が心配な方は漬ける時にお酢を少量垂らすと良いかと思います。一滴垂らすごとにリスクが減ってゆきます。これは多くの料理やキッチンまわりの衛生に応用できるので頭に入れておくと良いかもしれません。

■酢酸濃度が高くなるほど抗菌効果増強
また、検証の結果、以下のことがわかっています。

1. 酢酸濃度0.1%(食酢をおおよそ40倍の水で希釈したときの濃度)で多くの食中毒菌増殖を抑制する(上表静菌効果欄二重丸)
2. 酢酸濃度が高いほど抗菌効果は強くなる。
3. 食酢と食塩(塩分)を併用することで抗菌効果は高まる。
4. 温度を上げることによって抗菌効果は高まる。

■病原性大腸菌O-157に対する食酢の抗菌効果 かつて社会問題化した病原性大腸菌O-157にも食酢は抗菌効果を発揮します。

mizkan 食品の防腐からキッチンまわりの洗浄まで ナチュラルで安心な食酢の抗菌効果

あとは浅漬けにどれぐらいの分量の塩を用いるか。これに関してはお好みでおこなって下さい。目安として野菜の重量に対して2%の塩を用いると程よい仕上がりになります。昆布を一緒に漬けると旨味が増しますが、昆布なしで漬けても良いかと思います。旨味の不足を感じた場合は食べる時に味噌をつけたり、醤油を垂らしたり、鰹節をかけたりすれば旨味を補強することができますから。

浅漬けの基本の材料(作りやすい分量)

季節の野菜 … 適量
塩 … 野菜の重さの2%
昆布 … 野菜の重さの1~2%
※昆布は必要がある場合のみ加えるので、
各レシピを参考にしてみてください!

白ごはん.com 浅漬けの作り方/レシピの基本

それでは今回は、きゅうりの浅漬けの作り方を簡単に解説しておきます。新鮮なきゅうりはとげとげ(いぼが尖っている)しています。できるだけそのようなきゅうりを選びましょう。とげとげが気になるようであればまな板で転がしたり、包丁の背で優しくなでて外しても良いかと思います。

色にこだわりたい場合は「色だし」という工程をはさむと良いでしょう。まずきゅうりの両端を落とします。それからまな板に塩を散らしきゅうりを転がして「板ずり」をし、そのきゅうりを熱湯にさっとくぐらせて冷水に取る。この作業を行うときゅうりの発色がよくなります。

中心にある種の部分の水分が気になる場合は縦半分に切り分けてからスプーンで種を取り除きます。取り除いた種はドレッシングのつなぎに利用できます。



きゅうりを食べやすいかたちに切り分けたら計量し、ジップロックやポリ袋に入れ、きゅうりの重量に対して2%の塩を振りかけ、塩が全体に行き渡るように振ったり揉んだりします。そして袋の空気をなるべく抜くように押さえつけながら口を閉じ、冷蔵庫に入れて重しをのせておくだけです。白ごはん.comの冨田ただすけ氏はバットとバットの間にそれをはさみ、漬物石をのせる方法を提案しております。この方法でしたら均一に圧が加わると思います。漬物石がない場合は水の入ったペットボトルでも代用出来ます。




写真は種を取り除いて作った浅漬けです。きゅうりは粗塩を揉み込んだ時点ですでに美味しく頂けますから、あまり長時間漬ける必要はありません。様子をみながらお好みの具合に仕上げてみて下さい。美味しく漬けあがったら2日以内を目安に食べきることをお勧めします。

最後に、いったいどれぐらいの割合の人が漬け物を日々漬けているのかを調べてみました。マイボイスコム株式会社が2013年におこなったアンケートによると以下のような結果になったようです。

つけものを食べる人のうち「市販のつけものを購入する」は8割強。「市販のつけものの素を利用して漬ける」「調味料や漬け床を調合して漬ける」など、自宅でつける人は各2割強

マイボイスコム株式会社 自主企画アンケート結果 つけもの(第二回)

ご自身で漬ける派がここまで少ないことに驚きました。浅漬けはほんとうに簡単な料理ですから、未経験でしたら是非ともこの機会に試して頂きたいところです。市販の浅漬けはおいしい物も多々あるかと思いますが、漬汁の味が強すぎて素材の味が出てこないものも多く見受けられますので。